マルツオンラインの年末年始 sale で Digilent Analog Discovery 3 (以下、AD3) を買ったのに、うかうかしてたらもう2月。時間の経過が早過ぎやしませんか。閑話休題、あまり web に情報がないようなので、私なりの雑感なんかを書いておきます。
注意点
まずは注意点から。2025-02-02 現在で最新の WaveForms version 3.23.4 (2024-08-05 公開) は I2C の decode が途中でおかしくなる不具合があります。私のところでも BOSCH BME280 の通信を眺めていて発生しました。Digilent Forum で公開されている beta version を使いましょう。
また、たまに本体からカチッという音が聞こえますが、range を切り替える relay の音で異常ではないとのことです。
気温20℃前後の屋内で使ったところ内部の温度が60℃を越えたので、こと電源装置として使うときは熱を逃がしやすいように設置するのがよいと思います。
使った感じ
Analog Discovery 2 (以下、AD2) の直系の後継機というか、もうほとんどそのまんまなので、特に困ることはありません。逸般の誤家庭ならどこにでもある 555 を適当に無安定 mode で動作させて観察すると、こんな感じの画面になります。

Saleae Logic との比較
凶暴な円安になる前に Saleae Logic を買っておいて本当によかった。Saleae Logic があるのに AD3 が要るのかとも思ったのですが、哲学がまったく違います。AD3 の方は classic な trigger などを駆使して必要なところを高精度で取得できるため、仕様や挙動が分かっている対象には効果的です。一方で Saleae Logic は「なんかよく分からんけどとりあえず数GB の memory に全部ぶっ込んでおいて、後から超絶使いやすい UI で解析する」みたいな雑に計算機の性能で殴る使い方ができるため、仕様や挙動がイマイチよく分からなくても比較的楽に対応できます。

以下、独断と偏見で見所をまとめてみました。
見所 | Analog Discovery 3 | Logic Pro 16 |
---|---|---|
概要 | 万能測定器 | Debugger |
一文でまとめると | “you’re no longer tied down to a traditional benchtop and stacks of expensive test instruments.” | “Debug hardware like the pros.” |
使い方 | Trigger などを駆使して必要な箇所を測定する | 長大な memory に記録して後から解析する |
用途 | 動いている機器の試験。Oscilloscope / Logic analyzer 以外の計測 | 開発中、思った通りに動かないときの調査。よく分からない driver や protocol の解析 |
Oscilloscope | 2ch, 14bit, 125MHz (Default 100MHz) | 12bit 50 MS/s @ 3 ch 12.5 MS/s @ 13 ch 6.25 MS/s @ 16 ch |
Logic Analyzer | 16ch, 125MS/s (Default 100MS/s) | 500 MS/s @ 4ch 100 MS/s @ 16ch |
Interface | Connector 形状は USB-C、信号は USB 2.0 | USB 3.0 MicroB |
長所 | 電源装置 Pattern/Waveform Generator 変換基板を介して BNC probe が使える | Software がものすごく使いやすい 全 port が analog/digital 両対応で同時に計測可 |
短所 | 一度に測定できる時間が短い | 今となっては超高価 Analog はそこまで早くはない |
[2024-02-03 追記] 16-bit mode?
Reference Manual によると “The samples themselves are stored in a 16-bit format, so increased resolution is available at lower sample rates with 15-bit resolution available when sampling at half of the system frequency and 16-bit resolution when sampling at one quarter or lower of the Adjustable System Clock Frequency.” なる記述があり、「PicoScope の上位機種でしかお目にかかれない機能がこの価格で!?」と色めきたったのですが、たぶんこの記述は間違いだと思います。
というのは、AD3 (と ADP2230) に載っている ADC は TI ADC3644 で、これはどうがんばっても 14-bit しか出力できません。上位機種の ADP3250/ADP3450 は 16-bit も可能らしいので、たぶんその話が混ざったんじゃないかなと。
実際に sample rates を色々と変えて試しましたが、見た感じに変化はありませんでした。16-bit を平均して 14-bit にすればジグザグが滑らかになりそうな気はしますが、そんなことはまったくありません。
続く
AD3 に関してはまだネタがあるので、そのうち掲載します。ではまた。
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